ただ文章を打ってたいんだ。

気持ちただ漏らし備忘録

残さず食えない何か

乾ききった千切りキャベツをもさもさもさもさと食む。
食べると言うよりかは食む。
まるでウサギのように無限に口をもさもさもさもさもさもさもさもさもさもさもさもさ。
さすが食べ放題の店。陳列してから一度も入れ替えをしていない味がする。芯でもない癖にやたら美白だし。

前夜、死ぬ程ではないにしろ、うまくもないビールを大量に煽った。
胃袋から悲鳴が聞こえる前に乾ききった以下略、をある程度食べる。そこからパンケーキと言う名のホットケーキを貪る。パンケーキの割にはあまりに貧弱だからホットケーキで構わない。貧弱、いや簡素だから。簡素過ぎるから、出し放題のソフトクリームを腹が壊れるまで乗せた。メニュー外のメニューを作る。

誰でも思い付きそうなことなのに、また自分の賢さに自惚れたのは言うまでもない。更に乾き以下略、を食んだ意味がなくなっているのもまた、言うまでもない。

痛む腹を抱えて電車に乗り、取り置いた雑誌を買いに行く。
隅田川の花火大会当日、色とりどりの浴衣を着た女の子達。たまにお亡くなりになった女の子とすれ違い、お盆も近いなと思う。
店頭にはピース又吉の本とコーヒーのポスターをでかでかと掲げている。かなり前にサイン会があったのを思い出し、並んでもらっておけば今頃プレミア価値だったな……ときな臭いことを考えた。

「すいません、昨日取り置きの電話したんですけど」
研修中のバッヂを下げた店員さんに話しかける。にっこり笑い、背後の取り置き棚をあさり始める店員さんを見て思う。

(……あー。そこさあ、昨日一昨日で取り置いた人の本は置かないよ。)

長いことお世話になっている書店だから、何となくどういう仕組みになっているかわかる。

「あのー、これ以外に親なるナントカって本の在庫、あそこに前積んであったやつ、ありますか」
隣のレジでは最近よくバナー広告に掲載されている『親なるもの断崖』の新装版について尋ねる人がいた。
あそこ、と言うのは入り口横にある新刊や話題作だけを置いたメインコーナーだ。

(……あー。それねえ、もうコミックコーナーに行ってる頃合いだよ。ここにはない。)

「えっと、おや?ですか?」
受け答える店員さんは書名さえご存知ないようだ。

(勤め先のメインコーナーのラインナップもチェックせず働いているのかい……。)

おじいちゃんみたいなことを思う。長いことお世話になっている書店だから、メインコーナーの入れ替わりサイクルくらい何となくわかる。

「ああ、親なるもの断崖ですね」
少し齢を重ねたおじさん店員が出てきた。
「そうそれ」
「断崖、で調べてみて。出てくるよ」
「あっ、はい!」

(おっさんやるねぇ!)

「あ、あとその雑誌は棚じゃなくて下」
「はい!」

ようやっと会計をした時、自分の加齢を改めて意識してしまった。本の入れ替わりとか、取り置きの場所とか、普通はそんなことまで気にせずに買うだろう。
ああだこうだ思った時点で負けを感じる。あるいは、心が狭いとか。
乾ききって食えないのはキャベツではなくて自分自身かも知れない。それに気が付かなければ、取り置いた雑誌がまだ店頭在庫しているかどうかも確認しなかった。

店頭在庫は既になかったから、それはそれで結果オーライ。そう思うことにしよう。何がオーライなのか、よくわからないけれど。